マーマレードの歴史

History of Marmalade

「マーマレード」イギリスの朝食の定番

薄切りのトーストにオレンジマーマレードはイギリス人の朝食の定番。黄金色に輝く「マーマレード」はイギリス人の朝食には欠かせない、国民食といってもいいほど消費量のジャムです。

そんなマーマレード愛が高じて、イギリスの北西部、湖水地方にある「ダルメイン邸」では毎年マーマレード大会が開催されています、地元の手作りマーマレードの品評会から始まり、今では世界的に有名なマーマレードのコンクールとなりました。だれでも参加できるその大会には近年では日本人の参加者も増え、2019年からは愛媛県八幡浜市で日本大会が行われています。

イギリスでは、マーマレードの材料はすっぱすぎて食べられないスペイン産のシビルオレンジを使ったものが一般的です、その苦味からマーマレードが苦手な方も多いと思いますが、酸味のある柑橘はペクチンを多く含んでいるのでマーマレードを作るのに適しています。これからこのシビルオレンジがイギリスで欠かせない「マーマレード」になった伝説的なお話をしましょう。

「マーマレード」の歴史

18世紀半ば、シビルオレンジを運ぶスペインの船が航海の途中で暴風雨の被害を受けました。そしてその船はスコットランドの「ダンディー」の港に避難したのです。売れものにならなくなったたくさんのシビルオレンジは、ジェームズ・ケイラーと呼ばれる地元の貿易商に二束三文で売られました。ジェームズの母親は、いろいろ考えた末、この苦いオレンジを砂糖と煮詰めてジャムに変えて地元の人たちに販売しました。これが今もダンディーで伝説になっているジェームズケイラーの「ダンディーマーマレード」の誕生です。その後ジェームズの息子はダンディーでジャムを製造する製菓店をはじめ、世界初のマーマレード工場を設立しました。これがイギリスで最初の商用ブランドのマーマレードになり国内各地に販路を広げ、1828年、社名をジェームズ・ケイラー&サンと改名しました。近年ではこの社名の入った陶器の瓶が骨董品としてアンティークショップに並んでいます。

もう少しマーマレードの歴史を紐解いてみましょう。イングランドで最も古いマーマレードの原型といわれる「オレンジのマルメロ」というレシピは、1677年にさかのぼります。北西イングランドの貴族の館で発見され、今も歴史書籍として保管されています。スコットランドで最も古いマーマレードのレシピは「オレンジマーマラット」です。1683年サザーランド伯爵夫人ヘレンによって書かれたと果物の保存法とゼリーの作り方の本に書かれています。英国ではジェームスケイリーの母が「マーマレードの生みの親」といわれることが多いのですが、実はマーマレードの歴史はもっと古いのです。もちろんケイリー・ママがマーマレードを商品化してイギリス中に普及したという功績はたたえるべきですね。

マーマレードの語源は、ポルトガル語の「マルメロ」(西洋かりん)というフルーツだといわれています。ポルトガルではこのマルメロを使って「マーマラーデ」というフルーツペーストが作られていました。またスペインでもこのマルメロのフルーツペーストを「メンブリロ」と呼んでいましたが、クインスは酸味が高くペクチンの含有量が多いのでそのまま食べることができません。スペインで栽培されていたシビルオレンジも同じようにすっぱすぎるので、マルメロをシビルオレンジに変えて作ったマルメロのようなジャム、つまり「オレンジのマルメロ」が 「マーマレード」と呼ばれるようになったのです。

日本で初めてのマーマレード

柑橘の歴史は古く、不老長寿の薬として貴重品でした。酸味が強かったため、お砂糖で煮てから食べていたそうですが、お砂糖も貴重品だったため、庶民に普及するには長い年月が必要でした。そして、マーマレードとして日本で初めて作られたのは1910年(明治43年)愛媛県の朝家万太郎氏によるものでした。イギリスへも輸出され、王室から感謝状が届いたという記録が愛媛県史に残っています。