イギリスのお菓子について

第1回 スコーンの食べ方

アフタヌーンティーの主役といえば、紅茶とスコーン。マフィンみたいに丸っこいスコーンは、イギリスの食卓に無くてはならない食材です。
スコーンを食べるときには、必ずクロテットクリームとイチゴジャムがついてきます。クロテットクリームとは、英国南西部のコーンウォール地方で作られるバタークリームのこと。最近は日本のケーキ屋さんでも見かけるようになりました。

このクロテットクリームをスコーンに塗るのが、意外と難しいんです。
まず、スコーンが脆い。パンの一片をちぎるようにスコーンを一かけらつまもうとすると、指の間でボロボロッと砕けてしまいます。
そして、クロテットクリームも脆い。マーガリンのようにクロテットクリームを薄く塗ろうとしても、ぜんぜん延びません。無理に延ばそうとすると、土台のスコーンが崩れてしまいます。

とあるアフタヌーンティーの時間、私がスコーンをボロボロッ、ボロボロッとこぼす姿を見かねて、英国人紳士が本来の食べ方を教えてくれました。
スコーンを小さくちぎろうとするからダメなんだと。横っ腹にナイフを入れて、ズバッと半分に分けるのが正解だそうです。
クロテットクリームをケチくさく薄く延ばそうとするのも間違い。カップの中のクリームをごっそり掬って、分割されたスコーンにどっさり盛る。塗るというより、盛るのが正解。
いちごジャムも同様に、どっさりと盛ります。なお、クロテットクリームといちごジャムのどちらを先に盛るべきかを論じ始めると、英国人同士でケンカになるらしいので、今回は触れません。

こうやって、2分割されたスコーンにクロテットクリームといちごジャムがどっさりと盛られれば、あとは食べるだけ。紅茶をがぶがぶ飲みながら、大きな口を開けてスコーンを頬張りましょう。
アフタヌーンティーといえば、ダルメインのお屋敷で振舞われた素敵なスコーンのことを思い出します。もちろんダルメインでは、いちごジャムの代わりにマーマレードが出てきます。クロテットクリームとマーマレードの組み合わせも、なかなかのものですよ。

第5回 イートン・メス

第5回 イートン・メス

イギリスの爽やかな夏の定番デザート、イートン・メスを作るのは簡単です。 苺とダブルクリーム(脂肪分の高い生クリーム)とメレンゲを合わせて、苺を煮たソースをかけたらもう完成! いただく時も、メレンゲを崩してmessy(ぐちゃぐちゃ)に混ぜていただくのが正解の食べ方です。 簡単で美味しく、今や世界中で愛されるお菓子ですが、実は名前の由来もなかなかにmess(混乱)なのがこのお菓子です。  ...

第4回 ヴィクトリア・サンドイッチ

第4回 ヴィクトリア・サンドイッチ

ヴィクトリア・サンドイッチとは、2枚のスポンジケーキの間にジャムやクリームを挟み、仕上げにお砂糖を振りかけたケーキです。 スポンジケーキと言っても、日本で知られている繊細でやわらかなスポンジではなく、イギリスのスポンジケーキというのは基本的にパウンドケーキに近い食べ応えのあるケーキのことを指しています。  ...

第3回 ショートブレッド

第3回 ショートブレッド

ショートブレッドはスコットランドの伝統的なお菓子で、バターがたっぷり含まれた、リッチな味わいのビスケットです。 イギリス全体で長く愛されるお菓子であり、その歴史は古く、発祥は12世紀と言われています。 当時はパンを作る際の余り生地を低温のオーブンで堅くなるまで焼き、「二度焼いた」を意味する古いフランス語の”biscuit”に由来して、「ビスケットブレッド」と呼んでいました。 そのうちにイーストがバターに代わり、「ショートブレッド」と呼ばれるようになったのです。...